胎動 増川寿一

「胎動」に寄せて
今回Outreで発表する作品は今年の5月、秋山画廊で展示した温度と映像のインスタレーションである。
温度はセンサー制御によるもので、36度〜38度の間で点滅を繰り返す保温電球、映像は海面を写した16mmフィルムをエンドレスに映写したものである。
これらのシステムは、物理学者イリヤ・プリコジンが1970年代初頭に提唱した散逸構造-エネルギーが散逸することで立ち現れる自己組織化が不断に進行する現象世界*1-のメタファーである。
さらに言い換えるならば、認識論的に分節可能なことからの遮蔽であり、非分節化-全体・全容の体現的空間の構成要素でもある。
絵画や彫刻としてこの作品を見ることは難しいだろう。見るという行為-見る者の皮膚や網膜といった根幹的部分も重要なファクターとなるのだ。
是非、多くの人に今回の展示に触れていただき、Outreのまた別の一面を覗いていただければと願っている。
温度はセンサー制御によるもので、36度〜38度の間で点滅を繰り返す保温電球、映像は海面を写した16mmフィルムをエンドレスに映写したものである。
これらのシステムは、物理学者イリヤ・プリコジンが1970年代初頭に提唱した散逸構造-エネルギーが散逸することで立ち現れる自己組織化が不断に進行する現象世界*1-のメタファーである。
さらに言い換えるならば、認識論的に分節可能なことからの遮蔽であり、非分節化-全体・全容の体現的空間の構成要素でもある。
絵画や彫刻としてこの作品を見ることは難しいだろう。見るという行為-見る者の皮膚や網膜といった根幹的部分も重要なファクターとなるのだ。
是非、多くの人に今回の展示に触れていただき、Outreのまた別の一面を覗いていただければと願っている。
*1「非線形科学」蔵本由紀著(集英社新書)
2008年10月
増川 寿一MASUKAWA TOSHIKAZU
1960 | 愛知県生まれ |
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1970 | 名古屋市中村区から岐阜県羽島郡柳津小学校に転校 この頃、自然の中で遊ぶことを覚える |
1976 | 岐阜県立加納高等学校美術科入学 高校で美術に関する表現技法を学ぶ 高校3年の時、彫刻を専攻して大学受験に失敗する |
1979 |
岐阜県立加納高等学校美術科卒業 東京の予備校にて受験勉強をするが、友人から借りた 「龍馬が行く」のおかげで、浪人時代を乗り切ることができる。 |
1980 | 東京芸術大学美術学部彫刻科に進学 |
1983 | 大学のアトリエで作品のマケット制作に没頭する 大学から久米桂一郎賞を贈られる この頃から大江健三郎の小説を読みふける |
1985 | 東京芸術大学美術学部彫刻科卒業 同年、東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻入学 UENO’85、フジヤマゲイシャ展(東京芸大と京都芸大の合同展) など学生企画の展覧会に参加 その関連でアートブック「PP」の編集に携わる 油画科やデザイン科の学生と交流を深める |
1986 | 初めての個展を秋山画廊(東京・日本橋)で開催する 同画廊の作家の鷲見和紀郎氏、遠藤利克氏などと知り合う アートブック「PP」第2号発行 |
1987 | 東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了 同年、東京芸術大学大学院美術研究科研究生となる(翌年まで) 彫刻素材にワックスを取り入れる |
1989 | 平成元年、高校の同級生だった小林聡美と結婚、武蔵野市に住む |
1990 | 長男、文起誕生 |
1991 | 綿布に水墨でドローイングした「越辺川」シリーズを制作 舟越桂氏の彫刻作品のモデルをする この頃、プルーストやジョイスの小説に触れる |
1994 | 次男、基延誕生 樹脂でモデリングして、それをカービングする彫刻シリーズを制作 |
1995 | 中世ヨーロッパの図像解釈イコノロギアによる作品シリーズを制作 |
1998 | 彫刻素材にラテックスゴムなどを使用し、 彫刻的形体が徐々に姿を 消すことになる |
1999 | 作業場を埼玉県坂戸市から新潟県南魚沼市に移す |
2000 | 写真をインスタレーションするようになる |
現在、東京都武蔵野市在住
<個展>
1986 | 「Underground Venus」秋山画廊(東京・日本橋) |
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1987 | 「Underground Venus #2」秋山画廊(東京・日本橋) |
1989 | 「VENUS」かねこ・あーとGT(東京・京橋) 「接吻」ときわ画廊(東京・神田) |
1991 | 「UNIT」ときわ画廊(東京・神田) ドローイング「越辺川」ギャラリー美遊(東京・神田) スカルプチャー「越辺川」秋山画廊(東京・神田) |
1992 | 「彫刻のメカニズム」かねこ・あーとGT(東京・京橋) 「彫刻のメカニズム」ギャラリー美遊(東京・神田) |
1994 | 「さまざまな眼62」かわさきIBM市民文化ギャラリー(川崎) 「WIND」秋山画廊(東京・日本橋) |
1996 | 「イコノロギアの系譜」秋山画廊(東京・日本橋) |
1998 | 「untitled」なびす画廊(東京・銀座) |
2000 | 「untitled」秋山画廊(東京・日本橋) |
2006 | 「practice?遍在」秋山画廊(東京・北参道) |
2008 | 「胎動」秋山画廊(東京・北参道) |
<グループ展>
1985 | 「UENO ’85」東京芸術大学奏楽堂跡地(東京・上野) 「フジヤマ ゲイシャ展」東京芸術大学展示室、ギャラリー16他 |
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1987 | 「茂井健司・増川寿一2人展」秋山画廊(東京・日本橋) |
1989 | 「Sheraton Sculpture Exhibit ’89」シェラトンホテル(舞浜) |
1990 | 「架想モニュメント展」かねこ・あーとGT(東京・京橋) |
1994 | コレクション ’94「飾る空間」ギャラリー美遊(東京・神田) |
1995 | 「A Piece of My Art 」ギャラリー美遊(東京・神田) 「様々な平面(W)1995」かねこあーとギャラリー(東京・京橋) 「セレクション1995から1996へ」かねこあーとギャラリー(東京) |
1996 | 「匍匐は跳躍 creeping is leapinng」なびす画廊(東京・銀座) 「A Piece of My Art 2 」ギャラリー美遊(東京・神田) |
1997 | 「京橋界隈 ’97」なびす画廊(東京・銀座) |
2006 | 「小品展 ’07」秋山画廊(東京・北参道) |
<受賞・論評>
1985 | 久米桂一郎賞(東京芸術大学) |
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1992 | 「奇異な空間感覚を誘う」三田晴夫氏、毎日新聞 |
1994 | 「記憶されえぬもの」と「記憶されるべきもの」高島直之氏、 さまざまな眼62カタログ |
1995 | 「ぶつかり合う平面」日経アート |
2004 | 武蔵野美術大賞展 準大賞(東京・武蔵野市) |
<パブリックコレクション>
上智短期大学(神奈川県秦野市)
■お問い合わせは、長良川画廊 電話058−263−4322、メールまでお願いします。■