今回Outreで発表する作品は今年の5月、秋山画廊で展示した温度と映像のインスタレーションである。
温度はセンサー制御によるもので、36度~38度の間で点滅を繰り返す保温電球、映像は海面を写した16mmフィルムをエンドレスに映写したものである。
これらのシステムは、物理学者イリヤ・プリコジンが1970年代初頭に提唱した散逸構造-エネルギーが散逸することで立ち現れる自己組織化が不断に進行する現象世界*1-のメタファーである。
さらに言い換えるならば、認識論的に分節可能なことからの遮蔽であり、非分節化-全体・全容の体現的空間の構成要素でもある。
絵画や彫刻としてこの作品を見ることは難しいだろう。見るという行為-見る者の皮膚や網膜といった根幹的部分も重要なファクターとなるのだ。
是非、多くの人に今回の展示に触れていただき、Outreのまた別の一面を覗いていただければと願っている。
*1「非線形科学」蔵本由紀著(集英社新書)
2008年10月
現在、東京都武蔵野市在住
上智短期大学(神奈川県秦野市)