愚堂東寔
Gudou Toushoku
- 作家名
- 愚堂東寔 ぐどう とうしょく
- 作品名
- 詩書
- 作品詳細
- 掛け軸 紙本水墨 緞子裂 時代箱
本紙寸法43.5×27.5
全体寸法54.8(胴幅)×109 ㎝ - 註釈
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【原文】
龐居士因売竹摝籬。下橋喫撲。女子霊照、一見亦倒爺辺。士云、你作甚麼。女云、見爺倒地。某甲相扶。士云、頼是無人見。愚堂書【訓読】
龐居士は因りて竹摝籬を売る。橋を下りて撲を喫(くら)う。女子霊照は一見して亦(また)爺の辺に倒れぬ。士云はく、你(なんじ)甚麼(なに)を作(な)さんや。女云はく、爺の地に倒れるを見る。某甲(わたし)は、あい扶(たす)ける。士云はく、この人の見る無きを頼む。愚堂書【語釈】
龐居士―中国唐代の在家仏教者。娘の霊照と共に竹ざるを売って生活し、仏道を楽しんだ。『龐居士語録』がある。
竹摝籬―竹で作った垣根。竹がき。ここでは竹製のざるであろう。
撲―この場合は小石の意か。 霊照―龐居士の娘。【訳文】
龐居士は竹のざるを売っていた。橋を降ろうとして小石につまづいて転んだ。娘の霊照はそれを見て、自分もまた居士の隣に倒れた。居士が言った、「おまえは何をしているのだ?」と。娘が言った、「父上が倒れたのを見ましたので、わたしはお助けするつもりで倒れたのです」と。居士が言った、「人が見ていなくてよかったわい」と。愚堂書【典拠】
『禅林類聚』巻十七など。【鑑賞】
現在この説話は、倒れた人を助け起こすことは、その人にとっての本当の助けにはならず、自分も倒れてみて、倒れた人の気持ちを理解することが本当にその倒れた人を助けることにつながるという意味合いで解釈されている。