伊藤博文、長三洲
Ito Hirofumi, Cho Sanshu
- 作家名
- 伊藤博文、長三洲 いとう ひろふみ、ちょう さんしゅう
- 作品名
- 竹と富貴図
- 作品詳細
- 掛け軸 絹本淡彩 緞子裂 合箱
本紙寸法41.4×132.5cm
全体寸法62.1×205cm - 註釈
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【原文】
一種芳姿尤嬝娜
萬紅謝没擅繁華
山妻稍老無嬌態
挑看園中国色花
長炗堂画牡丹余亦写竹一茎併成観
時癸巳六月二十一日也春畝一人、博文【訓読】
一種の芳姿、尤(もっと)も嬝娜(じょうだ)なり
萬の紅謝、繁華を擅(ほしいまま)にする没(な)し。
山妻、稍(やや)老いて、嬌態無し。
挑(いど)み看る、園中、国色の花
長炗堂、牡丹を画く。余、亦(また)竹一茎を写し、併(あわ)せて観を成す。
時に癸巳六月二十一日也、春畝一人、博文。【語釈】
芳姿―美しい姿
嬝―嫋の俗字
嬝娜―じょうだ。嫋娜に同じ。たおやか。しなやかで美しいさま。
紅謝―赤色の花々のことか?
繁華―花が咲き乱れること。
擅―せん。ほしいまま。
山妻―自分の妻の謙称。
嬌態―なまめきこびる色っぽい態度・様子。
国色―一国の中で随一の容色。絶世の美人。牡丹の異称。
癸巳―明治26年(1892)。【訳文】
牡丹の独特の美しい姿は、もっともたおやかで美しい。
他の色々の花々も、咲き乱れて美しさをほしいままにすることはできない。
我が老妻は、年老いて色気はなくなった。
園中の牡丹の花を、挑みかかるように眺めている。
長炗堂が牡丹を画いた。私もまた、竹一茎を写し、あわせて景観としたい。
時に癸巳六月二十一日である。春畝一人、博文。伊藤博文が竹を描き、さらに絶句を賛し、長三洲がの牡丹と岩を描いたもの。伊藤博文の画は極めて稀少。