橋本関雪
Hashimoto Kansetsu

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作家名
橋本関雪
はしもと かんせつ
作品名
東海雄観並詩軸(双幅)
作品詳細
掛け軸 紙本彩色 緞子裂 象牙軸 共箱 二重箱
本紙寸法38.9×157
全体寸法53.2(胴幅)×221㎝
註釈

【翻刻文】
獨立天風萬里吹
乾旋坤轉入横披
吾推大雅是仙骨
畢竟丈山遺悪詩
絶頂著涼星語集
魂雲層盈自得奇
登〇〇罷秋生鬂
如此豪〇説向誰

   函雪外史題

【読み下し文】
獨り天風の萬里を吹くに立つ
乾旋坤轉横披に入る
吾は推す大雅是仙骨
畢竟丈山は悪詩を遺す
絶頂涼著しく星語集ひ
魂雲は層盈し自ずから奇を得たり
・・・・・・・・秋鬂に生ず
此くの如き豪〇誰に向かって説かん

【現代語訳】
独り万里を吹く天風の中に立つ
大空に吹き荒れる風は地をなぎ倒す
私は大雅こそ仙骨を備えた人物であり
結局、丈山はつまらぬ詩を遺したにすぎないと思う。
頂点に立てば星はさざめきその清涼は極まり
魂魄を載せた雲は幾重にも重なる
・・・・・・・・鬢も白くなる
このような豪〇を一体誰が理解してくれるだろうか

【翻刻文】
君不聞一観那保里死不悔
又不聞禮門花咲南國春
西人没説南歐美
未知東海奇山水
秦人採葯猶不死
長仰萬乗聖天子
誰云人間有蓬莱
蓬莱巍峨接瓊臺
芙蓉八朶削白雪
直聳滄海碧玉杯
勧君一到日本國
天彩地繍百花開

   関雪併題

【読み下し文】
君聞かずや一たび那保里を観れば死すとも悔いずと
又聞かずや禮門花咲く南國の春を
西人漫りに説く南歐の美
未だ知らず東海の奇山水
秦人、葯を採って猶ほ死せず
長く仰ぐ萬乗の聖天子
誰か云ふ人間蓬莱有りと
蓬莱巍峨として瓊臺に接す
芙蓉八朶白雪を削り
直聳す滄海碧玉の杯
君に勧む一たび日本國に到らんことを
天彩り地繡して百花開く

【現代語訳】
ナポリを観てから死ね、という言葉を聞いた事はないだろうか
又、レモン花咲く南欧の春と聞いた事はないだろうか
西洋人はむやみに南欧の美を語る
東海の優れた山水の美も知らないで
秦人は不老不死の葯を探し求めてこの国にやって来て
長い間万乗の位につく聖天子を仰いでいた
人間世界に蓬莱の国があると誰が言うのか
蓬莱の島はここに険しく聳え立って玉のうてなに続いている
芙蓉のように美しい冨士は白雪を削り
青海原にそそり立つ碧玉の杯