【原文】
秋潮夜落空江渚
暁樹離々含宿雨
伊軋中流間櫓声
臥聴漁人隔煙語
雲林自題山水、
贈孟膚徴君詩
也。静逸之気、詩
与画皆類其人。
韓天寿書
【訓読】
秋潮、夜空江の渚に落つ
暁樹、離々として宿雨を含む
伊軋中流、間櫓声
臥して聴く、漁人隔煙の語
雲林自題山水、「贈孟膚徴君」詩也。
静逸之気、詩と画、皆其人に類す。
韓天寿書
【訳文】
秋の潮が夜の川面に満ちてくる。
まばらに生えた樹々は夜露に濡れる。
川の中流をぎいぎいと櫓の音がする。
わたしは霧の中から聞こえる漁師の声を横になって聞いている。
倪雲林の自題の山水画で、「孟膚徴君に贈る」と題する自賛詩である。
その静逸の気韻は、詩も画も、すべて雲林のものであろう。
韓天寿書
>※韓天寿が倪雲林の自賛画を模写したもの。詩句は雲林の詩集により訂した。
(箱書)
【原文】
大正六丁丑初夏、緑樹覆四隣之節、床頭得見此。精逸墨気。
乗着吾長日、只消画図中、御□賞識焉。於辺山仙頭里。不若
【訳文】
大正六丁丑(1917)初夏、緑樹が四隣を覆う季節に、床頭にこれを見ることができた。その精逸なる墨気により、わたしの長い夏の日を、画図の中に消すことができた。このように山仙頭里にて鑑賞するものである。不若
>本紙に多少小折れあり。