曽我量深
Soga Ryojin
- 作家名
- 曽我量深 そが りょうじん
- 作品名
- 唯崇斯信
- 作品詳細
- 掛け軸 紙本水墨 緞子裂 合箱
本紙寸法33.5×134.2
全体寸法46(胴幅)×204㎝ - 註釈
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《唯崇斯信》
出典は、親鸞の主著『顕浄土真実教行証文類序』(教行信証・総序)竊以難思弘誓度難度海大船、無碍光明破無明闇恵日。然則浄邦縁熟調達闍世興逆害。浄業機彰釈迦韋提選安養。斯乃権化仁、斉救済苦悩群萌、世雄悲正欲恵逆謗闡提。故知円融至徳嘉号転悪成徳正智、難信金剛信楽除疑獲証真理也。爾者凡小易修真教、愚鈍易往捷径。大聖一代教無如是之徳海。捨穢欣浄、迷行惑信、心昏識寡、悪重障多、特仰如来発遣、必帰最勝直道専奉斯行、唯崇斯信。噫弘誓強縁、多生叵値真実浄信、億劫叵獲。遇獲行信、遠慶宿縁。若也此回覆蔽疑網、更復逕歴曠劫。誠哉、摂取不捨真言、超世希有正法、聞思莫遅慮。爰愚禿釈親鸞、慶哉、西蕃月支聖典、東夏日域師釈、難遇今得遇、難聞已得聞。敬信真宗教行証、特知如来恩徳深。斯以慶所聞、嘆所獲矣。
竊(ひそ)かに以(おもん)みれば、難思の弘誓は難度海を度する大船、無碍の光明は無明の闇を破する恵日なり。然れば則ち、浄邦縁熟して、調達闍世(ちょうだつじゃせ)をして逆害を興ぜしむ。浄業機じょうごうき)彰(あらわ)れて、釈迦、韋提(いだい)をして安養を選ばしめたまえり。これすなわち権化の仁、斉(ひと)しく苦悩の群萠(ぐんもう)を救済し、世雄(せおう)の悲、正しく逆謗(ぎゃくほう)闡提(せんだい)を恵まんと欲す。故に知んぬ。円融至徳の嘉号は、悪を転じて徳を成す正智、難信金剛の信楽は、疑いを除き証を獲しむる真理なりと。爾れば凡小修し易き真教、愚鈍往き易き捷径(しょうけい)なり。大聖の一代の教、是の徳海に如く無し。穢を捨て浄を欣(ねが)い、行に迷い信に惑い、心昏く識寡(すくな)し、悪重く障専ら斯(こ)の行に奉(つか)え、唯(た)だ斯の信を崇(あが)めよ。多きもの、特に如来の発遣を仰ぎ、必ず最勝の直道に帰して、噫(ああ)、弘誓の強縁、多生にも値い叵(がた)く、真実の浄信億劫にも獲叵(えがた)し。遇(たまたま)行信を獲ば、遠く宿縁を慶べ。若しまた此のたび疑網に覆蔽(ふへい)せられば、更って復た曠劫(こうごう)を逕歴(きょうりゃく)せん。誠なる哉、摂取不捨の真言、超世希有の正法、聞思して遅慮(ちりょ)すること莫かれ。爰(ここ)に愚禿釈の親鸞、慶ばしい哉、西蕃(せいばん)月支(げっし)の聖典、東夏(とうか)日域(じちいき)の師釈に、遇い難くして今遇うことを得たり。聞き難くして已に聞くことを得たり。真宗の教行証を敬信して、特に如来の恩徳の深きことを知んぬ。斯を以て聞く所を慶び、獲る所を嘆ずるなりと。