各務支考
Kagami Shikou
- 作家名
- 各務支考 かがみ しこう
- 作品名
- 二川宛消息
- 作品詳細
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掛け軸 紙本水墨 中廻し更紗 合箱
本紙寸法47.8 ×15.6
全体寸法51.2(胴幅)×97.3㎝ - 註釈
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【翻刻文】
才川養智院迄被遣
可被下候。小松便ニ参候様ニ
爰元申合候。兎角之
貴報不承候間、是より
書通シ申入候。
露川御坊、其御地かと承候。
定而御出合可被成候。珍句
なと承度存候。
且又、先書ニ申入候文章、
仮名之詩なと、不憚加入
様御望候ハヽ、京便ニ可被遣候。
大和国ノ本庄より、諸国共
書通仕候。兎角ハ御返事
まち入候。
金沢留別 蓮二
八景の絵符に
いそくや越の鳫
明七日此会にて本吉へ
罷立候。一両年之内又々
北行の約束申候。其節ハ
必可得貴意候。御堅固ニ
風雅御たのしミ可被成候。以上。
後七月六日
見龍
二川様 -
【現代語訳】
才川(犀川)の養智院までおつかわしください。小松への便から回送するようにこちらから申し含めておきます。とにかく、あなた様の御手紙が到着しないので、こちらから書いて申し上げます。 露川御坊(尾張の沢露川)もそちらにおいでかと存じます。きっと出合っておられることでしょう。珍しい句なども承りたく存じます。
また、先便で申し上げました、文章や仮名の詩なども加えることがおいやでなければ、京都便でお申し付けください。大和国の本庄(郡山市本庄)より、諸国へ書きつかわしております。とにかく御返事をお待ちしております。
金沢留別 蓮二
八景の絵符に
いそくや越の鳫(金沢八景の絵符に誘われて越後の鳫は渡りを急ぐのであろうか) 明日七日に此会で本吉(石川県石川郡美川町)へ出立いたします。一両年の内にまたまた北陸行きの約束をいたしました。その節はなにとぞ御面談申し上げたく存じます。どうぞ御健勝に風雅の道をお楽しみくださいませ。以上。
後七月(享保六年、一七二一)六日
見龍
二川様【解説】
各地を行脚して芭蕉の俳諧を広めた各務支考が金沢の俳人とおぼしき二川に宛てた書簡である。二川からの手紙は犀川河畔の養智院(真言宗、現存)から小松経由で支考へ送るよう依頼している。また、確執があったと伝えられる尾張の俳人沢露川も金沢に滞在しているのではないかと、その動静を気にしている点興味深い。「文章や仮名の詩」の追加については京都へ手紙で申しつけてくれというのは、出版作業自体が京都で行われているためか。支考自身は大和郡山の本庄に滞在して、書簡で各地に連絡をとっていることがわかる。近々の訪問を約し、風雅を楽しむようにと一言付け加えるなど、各地の俳人と盛んに交流した支考の日頃の姿勢がうかがえる言辞である。日付「後七月」より、支考生前中の閏七月は享保六年(一七二一)しかないから、本書簡の差出年が特定される。総じてこの書簡は、各地を旅した支考の日常の活動の様子を如実に知ることができるだけでなく、執筆年次も明確であることから、伝記上必須の好資料と言えよう。