佐久間象山
Sakuma Shouzan
- 作家名
- 佐久間象山 さくま しょうざん
- 作品名
- 詩書
- 作品詳細
- 掛け軸 絖本水墨 緞子裂 象牙軸
安岡正篤識箱及び添え状 赤池濃、安岡正篤旧蔵
本紙寸法41.4 ×130
全体寸法(胴幅)56.4×212㎝ - 註釈
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不于譽命不避毀 譽命を求めず毀りをさけず
窮達両忘唯得己 窮達ふたつながら忘れて唯己を得たり
布衣業辱 天子知 布衣すでに辱うす天子の知
何論群蝨在褌裏 何ぞ論ぜん群蝨の褌裏に在るを
壷美酒琥珀光 玉壷美酒琥珀の光
傾之意氣更蹶張 之を傾けて意気更に蹶張す
儘從衰羸填溝壑 さもあらばあれ衰羸して溝壑に埋もるるも
高歌直欲排天閶 高歌直に天閶をひらかんとす甲子春有人送酒一壺 其色甚美味亦極洌 余久不飲酒
此日破禁飲之 不覚醺然以酔 因作短歌 象山平子明※群蝨→阮籍(竹林七賢)が小人輩を喩へ罵りたる語
名誉を求めず、毀りを避けず
困窮も栄達も二つながら忘れて、唯己を貫く
平民の私も既に忝くも天子の知を得て
小人が周囲にいて、とやかく言おうと気にする事もない
玉のような美くしい壷に入った琥珀の光り
之を傾けると意気は更にふるいたつ
年老い、痩せてのたれ死にしようと、それが何だ
己の思う所を高らかに歌い、直ぐに天門を開くとしよう甲子の春、さる人から酒一壺を送られた。その色も非常に美しく、味もまた極めて清冽。私は長く飲酒を止めていたが、この日は禁を破り、この美酒を飲む。うかつにも次第に酔ってしまい、そこでこの短歌を作った。
象山 平子明
※甲子の春は元治元年(1864)、象山はこの年の七月に暗殺された。
舌代
象山先生會心ノ作ノ由、詩書共ニ傑作、
故赤池濃氏(警視総監)秘蔵ノトコロ
事ニヨリテ小生ニ割愛サレマシタ。疎開中、防
空濠デ黴ヲ出シマシタ 匠ニ出シ清装サ
セヨウトシテ ソノマヽ疎開地ニ置ツ放シニナツテ居
リマシタ 急ニ思ヒタチ 酒ヲ愛セラルヽ 而テ象山先
生ト同郷ノ尊大人ニ敬贈致シマス
節子婦嫁ノ朝
安岡正篤 拝
伊藤久壽様 侍生