犬飼毅(木堂)
Inukai Tsuyoshi(Bokudou)
- 作家名
- 犬飼毅(木堂)いぬかい つよし(ぼくどう)
- 作品名
- 詩書
- 作品詳細
- 掛け軸 紙本水墨 緞子裂 合箱
本紙寸法33.2×136㎝
全体寸法50×202cm - 註釈
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【原文】
危樓踞峭壁
轟立従水中
風浪鼓巌罅
夜来聴黄鐘
孤客眠未就
長吟対秋宵
済々露光白
月影落船篷
辛亥夏録旧作 木堂毅【訓読文】 危樓は峭壁に
踞 まり、
水中より轟立す。
風浪は巌罅を鼓 ち、
夜来、黄鐘を聴く。
孤客、眠り未だ就かず。
長吟して秋宵に対す。
済々たる露の光は白く、
月影、船の篷 に落つ。
辛亥の夏、旧作を録す。木堂毅。【訳文】 高楼は壁のようにけわしい崖に建てられ、
轟然と水の中より屹立している。
波浪は岩の罅を打ち、
昨夜から鐘の音のように聞こえてくる。
孤独な旅人は眠りにつくことができず、
声を長く引いて吟詠し、秋の宵を眺めている。
美しい露は白く光り、
月の影が船の苫に落ちる。
明治44年(1911)辛亥の夏に旧作を記した。木堂毅。※本詩は『木堂先生韵語』に所収される(ただし語句に小異あり)。それによれば「明治十六年秋遊松島宿雨奇晴好閣」と前書きがある。晴好閣とは現在松島の名勝として知られる観瀾亭のことで、「雨奇晴好」の額がかかっている。明治16年(1883)、犬飼29歳の時、東北地方を旅行したか。