竹内栖鳳
Takeuchi Seiho(Takeuchi Seihou)
- 作家名
- 竹内栖鳳たけうち せいほう
- 作品名
- 虞美人草図
- 作品詳細
- 掛け軸 紙本淡彩 金欄牙軸 共箱
作品寸法46.5x38.9㎝
全体寸法65.8x131㎝ - 註釈
「虞美人草」について
この作品は画題を「ヒナゲシ」とせず敢えて「虞美人草」と名付けたのですから、当然、この作品は中国の古典「史記」に登場する項羽(こう)と劉邦(りゅう ほう)の戦いにまつわる伝説が主題としてあるのだと思います。司馬遼太郎の小説にもあるこの「項羽と劉邦」は、紀元前3世紀末、秦の 始皇帝の死後、秦の支配力は弱まり天下は再び戦乱の時代に入ります。沛(はい)の劉邦は、楚の項羽と天下を争い、ついに楚を破り漢帝国を樹立します。項羽には虞と言 う愛人がいました。虞は項羽が劉邦に敗れて垓下(がいか)に追い詰められた時に死を覚悟した項羽が詠んだ歌にあわせて舞った後に自刃します。虞を葬った墓には、翌夏、 赤いヒナゲシの花が咲いたと伝えられます。以下、その垓下の歌です。力抜山兮氣蓋世 力は山を抜き気は世を蓋(おほ)う
時不利兮騅不逝 時利あらず騅(すい )逝(ゆ)かず
騅不逝兮可奈何 騅の逝かざるを奈何(いか)にせん
虞兮虞兮奈若何 虞や虞や若(なんじ)を奈何(いか)にせんこの作品はどこか寂しげではありますが立派な二輪の花を咲かせているように思います。この二輪の花の向こうに項羽と虞の姿を想えば、また作品の味わいも違ったものになるのではないでしょうか。