山元春挙
Yamamoto Shunkyo
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- 作家名
- 山元春挙 やまもと しゅんきょ
- 作品名
- 天狗面の図
- 作品詳細
- 掛け軸 紙本水墨 川村曼舟箱
作品寸法28.2×126.2㎝
全体寸法35.6×205.5㎝ - 註釈
「天狗」にもいろいろ由来や種類があるようです。元来は、中国最古の地理書、山海経の内、西山経3巻の章莪山の項の、「獣あり。その状狸(山猫を指すと考えられる)の如く、白い首、名は天狗。その声は榴榴の様。凶をふせぐによろし」とあり、中国古代の原始山岳信仰から発生した神話のなかの登場物の一つで、日本でも「日本書紀」に山海経と同じような天狗の記載があります。今日、一般的に伝えられる、鼻が高く、赤ら顔、山伏のような装束に身を包み、一本歯の高下駄を履き、葉団扇を持って自在に空を飛び悪行をするといった性質は中世以降、仏教や儒教の影響のなかで変化してきたイメージだそうですが、興味深いことは、日本の各地の山岳信仰のなかで伝わる山神としての「天狗」、例えば、奄美大島に伝わる、山に住む「テンゴヌカミ」は、大工の棟梁であったが、嫁迎えのため六十畳の家を一日で作るので藁人形に息を吹きかけて生命を与えて使い、二千人を山に、二千人を海に帰した話しや、愛媛県石鎚山の、六歳の男の子が山頂でいなくなり、いろいろ探したが見つからず、やむなく家に帰ると、すでに子供は戻っていた。子に聞くと、山頂の祠の裏で小便をしていると、真っ黒い大男が出てきて子供をたしなめ、「送ってあげるから目をつぶっておいで」と言い、気がつくと自分の家の裏庭に立っていたという話しなど、遙か中国古代神話とつながるような、各地にのこる多彩な「天狗」神話ではないかと思います。この作品も、単なる「天狗面」としてではなく、そういう古代から伝わる山岳信仰と結びついた「天狗」として空想力を働かせて眺めることも、書画の楽しみ方の一つではないでしょうか。