徳富蘇峰
Tokutomi Sohou

 徳富蘇峰 1
 徳富蘇峰 2
 徳富蘇峰 3 徳富蘇峰 3
 徳富蘇峰 3 徳富蘇峰 3
作家名
徳富蘇峰 とくとみ そほう
作品名
満月雲山七律
作品詳細
掛け軸 紙本水墨 金襴緞子裂 象牙軸 共箱
本紙寸法44×147.8
全体寸法59.8(胴巾)×197.5㎝
註釈

【原文】
物理人情自可明
何甞戚戚向平世
卷舒在我有成算
用捨隨時無定名
滿目雲山倶是楽
一毫栄辱不須驚
侯門見説深如海
三十年前掉臂行
『伊川撃壤集』

【訓読】
物理人情、自(おのずか)ら明(あき)らかなるべし。
何(なん)ぞ甞(かつ)て、戚戚として平世に向かわん。
卷舒、我に在(おい)て成算有り。
用捨は時に随いて名を定めること無し。
満目の雲山、倶(とも)に是れ楽しみなり。
一毫の栄辱は須(すべ)からく驚かず。
侯門、みるならく、深きこと海のごとし。
三十年前、掉臂の行(おこな)い。

【語釈】
戚戚―親しみあう様、うれえ恐れるさま、心の動くさま。
平世―おだやかな世、平和な世。
卷舒―けんじょ。才能をかくすことと表すこと。
成算―ことをなしとげる見通し。
侯門―領主の家
侯門深如海―故事成語。身分が変わると以前の交際が困難になる意。
見説―みるならく。聞くならくと同じ。見るところによれば。
掉臂―とうひ。ちょうひ。腕を振り動かす。勢いのよい、あるいは、いばっている態度。
※詩題は「龍門道中作」(龍門への道中の作品)
※作者は邵雍(しょうよう)1011‐77
中国,北宋時代の哲学者,詩人。康節はその諡(おくりな)。一生任官せず,洛陽で市井の隠者として終わったが,司馬光,富弼(ふひつ)といった政界の重鎮や,程子兄弟(程顥(ていこう),程頤(ていい))などの学者と交友。その主著《皇極経世書》では壮大な宇宙論的歴史観を展開し,特異な詩集《伊川撃壌(げきじよう)集》では自由人の喜びを率直にうたいあげる。彼は道学(のちの朱子学)の系譜からややずれるものの,その易学は朱熹(しゆき)に大きな影響。

【訳文】
ものの道理や人情は、自然に明らかになる。
どうして憂え恐れながら平和な世を求めようか。
才能を世に顕すも隠すも、私の見通しの中にある。
用いるかどうかはその時の状況によるのであって、名分を定めることはない。
見渡す限りの雲と山は、どちらも私の楽しみだ。
すこしばかりの栄枯盛衰にまったく驚くことはない。
君主の家門に入ると海のように深いものだというが、
三十年来、好きかってなことをしているのだ。