鄧州全忠(南天棒)
Nantenbou

鄧州全忠 (南天棒) 1
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作家名
鄧州全忠 (南天棒) なんてんぼう
作品名
話尽山雲海月情
作品詳細
掛け軸 紙本水墨 紙表具 合箱
本紙寸法33.3×131.2cm
全体寸法49.7×195cm
註釈

《話尽山雲海月情》

北宋初期の雲門宗の雪竇重顕が「景徳伝灯録」などに収録されいた語録から百則を選んだ公案集から北宋晩期の圜悟克勤が垂示・著語・評唱を加えた禅の教本『碧巌録』第五十三則から。八祖馬祖道一(馬大師)の弟子の百丈懐海への接化(修行者の指導)に対する雪竇重顕の偈の一節。

〈以下は八祖馬祖道一(馬大師)と弟子の百丈懐海に対する問答〉

馬大師、百丈と行くついでに、野鴨子(やおうす)の飛び過ぐるを見る。大師云く、是れ什麼(なんぞ) 丈云く、野鴨子。大師云わく、什麼処に去(ゆ)くや 丈云わく、飛び過ぎ去る。大師遂に百丈の鼻頭をひねる。丈、忍痛の声をなす。大師云わく、何ぞ曾(か)って飛び去らん

馬祖と百丈が歩いていると鴨が飛んでいく。馬祖は百丈にあれは何かと問う。百丈は鴨だと答える。次に馬祖は何処に飛んで行ったかと問う。百丈は何処かに飛んで行ったと答える。すると馬祖は百丈の鼻をつまんでひねった。「痛っ!」。馬祖は言った。ほれ、ここに飛び去らずにおるではないかと。

〈以下は上記の問答に対する雪竇重顕の偈〉

野鴨子 知何許 馬祖見來相共語 話盡(尽)山雲海月情 依前不會還飛去 欲飛去 却把住道道

野鴨子いずこなるを知らん 馬祖みきたって相共に語る 話り尽くす山雲海月の情 いぜんとして会せずまた飛び去る 飛び去らんと欲して 却って把住(とらえられ)る 道(い)え道(い)え

鴨がどこかはわからん。馬祖と百丈は、山の情、雲の情、海の情、月の情、森羅万象すべての情(こころ)について語り尽くす。いぜんとして鴨は飛び去る。飛び去ろうとして捉えられる。さどうだ。

鴨が飛んで行った。何処へ飛んで行ったかもわからんと百丈が思う。自然なことである。それを自然なことだと思うと禅では喝!と鼻をひねられる。そしてなぜか鴨と一緒にさせられ、ほれ此処に居るではないかと。ともかく、わかったようなわからんような典型的な禅問答ですが、その情景を雪竇重顕は、語り尽くして道を悟るか否や・・と感慨深く、また微笑ましく偈に読んだのかと思います。