寂厳
元禄15年(1702)~明和8年(1771)
備中足守藩(岡山県)に生まれる。連島町矢柄宝島寺の住職。俗姓、富永氏。字、諦乗。幼少のころに出家。京都五智山蓮華峯寺の曇寂に悉曇(梵語)学び、生涯を悉曇研究に捧げた。著作に『悉曇字記大観』など。江戸時代中期の代表的能書家としても知られる。
竹逕從初地 竹逕(ちくけい)初地(しょじ)従(よ)りし
蓮峰出化城 蓮峰(れんじょう)化城(けじょう)を出(い)だす
窓中三楚盡 窓中(そうちゅう)三楚(さんそ)尽き
林上九江平 林外九江平(たいら)なり
嫩草承趺坐 嫩草(どんそう)趺坐(ふざ)を承(う)け
長松響梵聲 長松(ちょうしょう)梵声を響びかす
空居法雲外 空居(くうきょ)す法雲の外
觀世得無生 世を観じて無生を得たり
【現代語訳】
竹林の小道は、 寺の入り口(悟りの入り口)に続いている。
蓮華の形をした峰から、弁覚寺(仮に作られた幻の都城)が姿をあらわす。
寺の窓から三楚を見渡す。
林ごしに九江が平らに広がっている。
若草が趺坐する人を受けとめる。
高い松の枝には、読経の声がひびく。
法雨を降らす雲の上に心を空寂にして住む。
浮世をながめ真如の境地を得たり。
本紙、多少傷みあり。