【原文】
憶昨難危際
猷謀規自然
心事今誰察
独笑問旻天
癸未晩夏 海舟散人
【訓読】
昨の難危の際を憶ふ
謀を猷るも自然に規(のっと)る
心事、今誰か察する
独り笑ひ、旻天に問ふ
癸未晩夏 海舟散人
【訳文】
昨年の危難の時を回想する。
はかりごとを進言したが、それは自然なものだった。
そのわたしの真意を、今誰が察してくれようか。
ただ独り笑って、大空に問うだけだ。
明治十六年癸未晩夏(旧六月) 海舟散人
※昨年の危難とは、明治14年の官有物払下げ事件をいうか。
海舟60歳の書
本紙、裂に多少ヨゴレ。