【原文】
天簫暁渡響参差
乍和幽琴抽妙思
残露猶留懸翠粒
晨烟未散覆金枝
一生不受雪霜暴
高韻只教風月知
人世栄枯真転眼
愛君長養厚身基
張氏紅蘭詩画
【訓読】
天簫、暁に渡り、響き参差(しんし)たり。
幽琴に和しながら妙思を抽(ひ)く。
残露、猶お留りて翠粒を懸(か)け、
晨烟、未(いま)だ散ぜず、金枝を覆う。
一生、雪霜の暴を受けず、
高韻は只だ風月の知を教う。
人世の栄枯は真に眼を転ず
君を愛して長養するは身を厚うする基(もとい)なり
【訳文】
自然の風韻は、暁にみち渡り、その響きは色々である。
かそけき琴の音に和しながら、すぐれた思いにひたる。
残露はまだ残って、翠の粒をあちこちに置き、
朝もやは晴れずして金の枝を覆う。
わたしは一生、雪や霜の被害を受けることはなかった。
高い風韻はただ風月の喜びを教えてくれた。
人世の栄枯転変はまことに眼がくらむばかり。
あなたを愛して向上につとめることこそ、人生を大事にする基盤なのです。
経年のヨゴレなどありますが、優品です。