頼山陽
Rai Sanyo(Rai Sanyou)
- 作家名
- 頼山陽 らい さんよう
- 作品名
- 詩書
- 作品詳細
- 掛け軸 紙本水墨 緞子裂 頼潔箱
本紙寸法27.3×127.3cm
全体寸法46.6×195.5cm - 註釈
-
舐筆寧追畵匠羣 筆を舐めて 寧ぞ追はん 画匠の群れ
研池剰墨愛淸氛 研池の剰墨 清氛(せいふん)を愛す
撑腸書巻爲何用 腸(はら)撑(さ)す 書巻何の用か為さん
結作蓬々幾幅雲 結んで蓬々 幾幅の雲を作(おこ)す舐筆・筆をなめて墨になじませる・かりそめに書くの意。
畵匠・画家・絵描きの意。
研池・「研」は「硯」に同じ。すずりの墨をためるくぼんだところを言う。
剰墨・残った墨の意。
淸氛・きよらかな気の意。
撑腸・腹に飽き足りる、満腹するの意。
結作・次から次へと湧き起こるの意か。
蓬々・盛んにしげるさま・風が吹くさま。
幾幅雲・幾重にも重なり広がる雲の意。〔押韻〕 羣・氛・雲
出典
『山陽先生遺稿』巻一所収、(木崎好尚『頼山陽詩集』巻四にも所収)「題二ス自畵山水一ニ三首」のうちの第一首目。文政9年(1823)、49歳の作。
頼潔箱書き
凡畵山水不可不一氣呵成。滯則墜俗。山陽翁作畵、特用意於此。然非不費意匠而成者也。翁、初学北宗、中年歸南宗。胷(きやう)中已蔵畜二派之風、而不抅其法、縦横抹塗、自以為快耳。此幅題其自画山水詩。作意極卓絶、吟誦足以窺知其意所存矣。書法亦自少至老數變、而後自樹一幟。此書則其佳境風骨雄大、有遒渾(しうこん)飛躍之妙。其為偉觀、不待論也。豈可不貴重哉。辛酉之九月 頼潔拝識
凡そ山水を画くに、一気呵成ならざるべからず。滞れば、則ち俗に墜つ。山陽翁の作画、特に意をここに用ゆ。然れば意匠を費やさずして成す者に非ざるなり。翁、初め北宗を学び、中年、南宗に帰す。胸中已に二派の風を蔵畜して、その法に拘らず、縦横に抹塗し、自ら以って快きと為すのみ。この幅、その自ら山水を画く詩に題せり。作意極めて卓絶、吟誦以ってその意の存する所を窺ひ知るに足れり。書法もまた少きより老いに至るまで数々(しばしば)しばしば数々變じ、而る後、自ら一幟を樹つ。この書は、則ちその佳境風骨雄大にして、遒渾・飛躍の妙有り。その偉観を為すこと、論を待たざるなり。豈に貴び重んぜざるべけんや。辛酉の九月 頼潔拝識
蔵畜・おさめたくわえるの意。
縦横・思うまま・自由自在の意。
抹塗・塗りつける・塗り消す・塗って色付けするの意。
卓絶・ずばぬけてすぐれていることの意。
一幟・一つの流派の意。
佳境・すぐれた境地の意。
風骨雄大・気品、おもむきの勢いが盛んでスケールが大きいの意。
遒渾 飛躍之妙・書画の筆勢に力があり、躍動感あふれるおもむき・あじわいの意。
偉観・みごとな姿形・すばらしいながめの意。
不待論・言うまでもないの意。
辛酉・文久元年(1861)