【藤城七絶・原文】
搗楮丁東充力田
寒湍?去浄於綿
近来都上百名賦
幾葉素雲纔両銭
藤城老圃
【秋水五絶1・原文】
牧谿製紙図
居民幽僻地
碧澗繞村鳴
処々炊烟起
丁々製紙声
【秋水五絶2・原文】
祈寒宜製紙
漉了覚其清
駄馬三都售
遍伝濃紙名
【秋水五絶3・原文】
家々簷外白
版々紙新成
飯熟鶏鳴処
乾之依午晴
秋水写併題
【藤城七絶・訓読文】
楮を丁東と搗きて力を田に充つ。
寒湍に?去して綿より浄し。
近来、都上の百名賦
幾葉の素雲、纔かに両銭
藤城老圃
【秋水五絶1・訓読文】
牧谿製紙図
居民、幽僻の地
碧澗、村を繞りて鳴る。
処々に炊烟起こり、
丁々と紙を製する声。
【秋水五絶2・訓読文】
寒を祈るは紙を製するに宜ろし。
漉き了りて其の清さに覚(おどろ)く。
駄馬にて三都に售れば、
遍ねく濃紙の名を伝う。
【秋水五絶3・訓読文】
家々、簷外は白く、
版々たる紙新たに成る。
飯熟し鶏鳴く処、
之を乾して午晴に依(まか)す
秋水写し併びに題す。
【藤城七絶・訳文】
楮をトントンとつけば力が田にみなぎる。
冷たい流れに浸せば、綿よりも白くなる。
最近みやこではやる名詩の数々は、
この幾枚かの白紙、数銭の紙に書かれているのさ。
藤城老人
【秋水五絶1・訳文】
牧谿製紙図
住民が静かに住まいなす僻遠の地、
川の流れが村をめぐって水音をたてる。
あちらこちらで炊事の煙が立ち上り、
トントンと紙をうつ音が聞こえてきた。
【秋水五絶2・訳文】
寒気を願うのは紙を作るのによいからだ。
漉きおわって我ながらその白さに驚いた。
これを駄馬に積んで三都で売れば、
天下に美濃紙の名声が広まるだろう。
【秋水五絶3・訳文】
家々の軒には白い紙がかかっている。
ひらひらと紙が新たにすかれてくる。
飯が炊けて、鶏が鳴くころ、
これを外に干してお日様にまかせておくのさ。
秋水が絵を写し、あわせて詩を題する。
※美濃市の指定文化財に値する作品。
まずまず美品。