《仏トナ名ナキモノノ御名ナルニ》
仏とは誰なのかと誰も尋ねる。だが仏が誰だと分ったら、そんな仏は仏ではあるまい。何々というような内容に限られる仏なら、無上のものとはいえぬ。仏とは、名附くことも出来ぬものに、仮に名づけた名に過ぎない。だから「無名」ともいわれるのである。言葉で言い尽し得るようなものなら、「不立文字」などとは説かぬ。「絶言絶慮」とか「非思量」とか、そんな言葉に託すいわれがない。仏を定まったある姿に描いたら、もう仏ではあるまい。仏は「無碍なるもの」それ自身ではないか。名などに、ましてある内容などに縛って、仏を定めてはいけない。名附くべき名もない故に、強いて無字の公安でその秘奥を見せようとするのでである。(柳宗悦・心偈)
装幀は、柳宗悦自ら施したもの。
美品です。