五浦即事
【原文】
蟬雨緑霑松一邨
鷗雲白漾水乾坤
名山斯処托詩骨
滄海為誰招月魂
天心居士
【訓読文】
蝉雨(ぜんう)、緑に霑(うるお)う、松一邨(まついっそん)
鷗雲(おううん)、白く掠(かす)む、水乾坤(みずけんこん)
名山、斯処(このところ)、詩骨を托す
滄海、誰(た)が為にか、月魂を招く
【訳文】
蝉しぐれのような雨が降り、松の木立は緑色に潤う。
鷗のような白い雲は、遠く水平線をかすめて飛んでいく。
著作をしては我が詩の心意気をそこに託す。
この青海原は、一体誰の為に夜ごと美しき月を招き寄せるのか。
名山‥『太史公自序』(史記)に「名山に蔵す」とあり、自らの手になる書物が失われることのないよう大切にしまっておくこと。転じて著作物そのものも指す。
台東区文化探訪アーカイブ(参照)
(Reference)
Tenshin Okakura - Masters who have connections with Taito City
優品。