東常縁
生没不詳
東氏は、下総の豪族千葉氏の一族で下総国東荘(現千葉県香取郡東庄町一帯)を領した東胤頼を祖とし、3代目胤行の時に、承久の乱(1221年)の戦功により美濃国山田荘(現在の郡上市大和町一帯)を加領され、根拠地を下総から美濃へ移した。常縁は、東氏の9代目。二条派の尭孝らに歌学を学ぶ。文明7年(1471)、二度にわたり宗祇に《古今和歌集》を講義(両度聞書)、古今伝授の最初の例となる。歌学書『東野州聞書』、注釈書『新古今和歌集聞書』、『東野州拾唾』などの著作を残す。
【原文】
尚々此事しかと可被下候。かしく。
預尊問候時分、他行候而不能
御返事候。恐入候。仍御用事
蒙仰候。先以得貴意候。昨今不珎
候へ共、紅葉一本贈進候。存よりつる
言語をならへ候。御返事まち存候。
しくれするもりの梢のつゆなから
から草かけてそむるもみちは
先日御もとの証申入事、失而
ならてはと申給候。恐惶謹言。
十月六日 常縁(花押)
【訳文】
なお、この事、確かにお願いいたします。かしく。
お問い合わせいただきましたおりは、他行しておりまして御返事できませんでした。
恐れ入ります。よって御用の事の仰せをいただきまして、まずは御意向がわかりました。
今は珍しくもありませんが、紅葉を一本進呈いたします。
思いついた言葉をならべてみました。御返事をお待ちいたします。
しくれするもりの梢のつゆなから、から草かけてそむるもみちは
(時雨する森の梢の露ながら、枯草かけて染むる紅葉葉)
先日、あなた様が証明されましたことを失念してはいけないとおっしゃいました。恐惶謹言。十月六日 常縁(花押)